身辺整理

「身辺整理しなくちゃ。」
　乳がんであることを告げた時,冗談で言いました。
　身辺整理なんてどうでもいいことと思っていました。

　そのきかっけは妹の近所の家を見たからです。
　その家は建て直しの為に,古い家を取り壊しました。
　必要なものだけ運び出したそうです。
　取り壊しの日,庭の樹木も根こそぎ家に入れてありました。
　その後,ショベルカーが上から潰して,トラックで運んで跡形もなくなりました。

　

「大事な物が捨てられないんだ。」
と,時々姉妹で話題になります。
「これ要らないから,使う？」
と,たまにあげたり,もらったりします。
　姉妹でも大事なものが全く違います。
　お互いにそれをくだらない物と思っています。
「大丈夫。いざとなったら,ショベルカーで潰してもらうから。」
　いつの間にかジェスチャーで通じるようになりました。

　もし,私の物が遺品となったら,
「妹に全部あげてね。」
と,家族に言っています。
　形見分けは年上の人には失礼だそうです。
　それでも,妹と私は趣味や好みが違います。
　私の持ち物で価値があるものは貴金属です。
　ジュエリーボックスを新調してアクセサリーを並べ替えました。
「これ見て。新しくしたの。売ればお金になるから。」
と,気づけば何気なく妹に見せていました。
　家族は忙しくて何もしてくれないけど,妹だったら適当に処分してくれそうと期待しています。

　元気になった今,あるはずの物が見当たりません。
　身辺整理しないと,どんどん同じ物が増えていきそうです。
　買ってきた方が早いと思ってしまいます。
　ちょっと部分的に整理すると忘れていた物が出てきます。
　身辺整理は宝探しです。