車の色

　車の営業マンが家に来ました。

　３年前から新車が出るのを待っていました。

　３ヶ月前から車の色を悩んで決めました。

　３日前から和室のごたごたを片付けました。

　結局，一番重要なのは車の色でした。

　
　
　３ヶ月前に，夫に言いました。
「今度買う車はピンクにする。」
　すると，夫は，
「ピンクの車で葬式に行くのか。」
と，反対してきました。
「毎日葬式に行くわけないし，乗せていってもらえばいいし，自分の葬式には車で行かないし，これが最後の車になるかもしれないし・・・」
と，聞いてないかもしれない夫に長々と言い訳していました。

　そして，昨日，
「やっぱりピンクの車にする。」
と，言ったら，
「好きにすれば。」
と，了解してもらえました。

　部屋はいい加減に片付けて，９時半の約束を待っていました。
　営業マンは１０分遅れて来たので，テンションが下がりました。

　でも，営業マンは大きなバッグにパソコンを入れて，家に上がり込む気マンマンでした。

　もう２台もこの人から買っているのだから，私のこだわりは分かっているはずですが，一応伝えました。
「カーナビとETCは要りません。コーナーセンサーは付けてください。」

　しばらくして，大事なことを聞きました。
「ピンクはありますか？」
「ありません。」

　そこで，一気にテンションダウンです。
「ピンクがないなら，この車は要りません。」
　自分でも信じられないくらい驚きました。
　３年も待っていたのに，色のせいでやめてしまうなんて。

「では，ピンクがある車の見積りを出しましょう。」
と，パソコンに向かって違う車の話をし始めました。

　私は車のことなど，どうでもよくなりました。
「何で，この人は私の家で仕事をしているのだろう。」
と，冷めた目で見てしまい，
「もうすぐ終わりますか。」
と，早く帰って欲しい攻撃をしました。

　結局，帰ったのは１０時半でした。

　それから，テンションを戻すために，図書館と美術館とスーパーマーケットに行って，１１時半に帰って来ました。

　買いもしない車の話に付き合って残念でした。